新型コロナウィルスのおかげで、日本でもテレワークが急激に当たり前になってしまいした。しかし、テレワークは日本のオフィスワーカーにとって慣れるのが難しい働き方でしょう。
日本のコミュニケーションは言葉以外のメッセージを交わすこと、つまり対面によるコミュニケーションがとても重要です。日本人は同じような文化的背景をお互いに暗黙に了解したうえで、曖昧な表現を行うといわれています(エドワード・T・ホール 1976)。であれば、テレワークのような対面を必要としない環境でも簡単にわかりあえるはずですが、実はそうではありません。言葉以外のメッセージを通じて細部まで理解することが求められます。
例えば、重要な会議であれば、参加者の表情やしぐさだけでなく、席の位置から、発言順、会議後の飲食接待の席まで、細部を漏らさず注意を払い理解しあう必要があります。日本国内だけでなく、海外で働く日本人が現地の人と仕事をするときも(外国語が苦手なこともあり)同じような細部を対面で確かめようとする傾向があります。
新型コロナウィルスが流行するまで日本のテレワークの導入が他国と比べ低かったのはこのような文化的背景にも深く根差していると私は思います。
今は社会距離を取ることが新たな日常となり、対面によるコミュニケーションは大変制限されるようになりましたが、変化に対する抵抗がとても強い日本人のことですから、そのうちにあっさりと元に戻ってしまうのでしょうか?一概にはそうともいえなそうです。
まず効率です。コストに極めて厳しいのが日本企業です。地価が高い日本ではオフィススペースはたいへん高コストです。これを減らせるなら、考え直すかもしれません。
次に内部統制です。近年、ワークライフバランスや様々なハラスメント防止、環境保護といった企業倫理の遵守の高まりがテレワーク推進を助ける可能性があります。
テレワークを通じて日本の労働慣習が激変することにはならないでしょうが、もう少し合理的な働き方ができるようになれば日本の未来は明るいかなと思います。
日本の歴史を見ても外圧が日本社会を劇的に変えてきました。新型コロナウィルスは確かに悲劇的な結果をもたらしていますが、この時こそピンチをチャンスと捉え日本の社会全体が大きく変わっていくことを期待します。■