参加者と開催者:固定化した関係を壊す

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数百人が参加する年一回の大きなイベントの開催をお手伝いしました。主催はあるNPOで、10人程度でイベントの準備をしました。少ない人数でなんとか乗り切りましたが、開催後に少しモヤッとした気持ちが開催者の間に残りました。

参加者のなかには、至れり尽くせりのサービスを期待されている方も少なからずいらっしゃり、多くのご希望を頂きました。いずれも「ごもっとも」なご意見なのですが、他方で開催者の中で違和感が湧き上がってきました。

参加者の多くは同じNPOの会員です。同じ会員なのに、参加者は顧客、開催者は業者という関係がつくられ、お互いに一方的な意見に終始しているような構図です。これは、「問いのデザイン*」に出てきた関係性の固定化です。それぞれの側で暗黙の前提があり、その間に溝ができてしまっています。

さて、開催者の間ではある問いが浮かんできました。

「業者と顧客の関係を壊して、みんな一緒に創り上げる関係ってできないのだろうか?」

イベントの終了後に、参加者とこの課題を話し合ったら、ひとつの光が見えてきました。

まず、イベントのテーマのような大きなことは、そこに至る過程を共有することです。次に、開催者が行うタスクの一部を切り出し、参加者にやって頂くことです。そして、参加者同士で助け合える場をつくることです。つまり、顧客に少し業者側へ歩み寄って頂く仕組みをつくり、その境界を曖昧にしていくということです。

これはプロジェクトの運営でも似たようなことが言えそうです。新たな関係の結び方をつくる。そのためには提供者側も今まで当たり前と思ったところから一歩踏み出す勇気が必要なようです。■

*問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション 安斎勇樹・塩瀬隆之著 2020年 学芸出版社