問いのデザインという本の勉強会に参加し、同書の創造的対話のイメージが少しつかめた気がしました。同書は、ファシリテーションの知見をベースに、人間の関係を豊かにすることで、新たな発想をつくる考え方を解説しています。同書では、ファシリテーターと参加者の間で行われる対話を4つに分類し、最も高次のレベルを創造的対話としています。この本を読んだばかりの時は、正直に言って、この創造的対話の意味は理解できても、実現したイメージが十分につかめませんでした。
しかし、今回、ファシリテーターの有志による同書の勉強会に参加し、同書の発想法を用いたグループワークをしたところ、この創造的対話が「こんな感じかな」という感触を得ました。私の問いに対して、相手から「そういえば…」とか「それは考えてみなかったけど…」といった反応が何回かありました。より上位の目的に関心を向けていく創造的対話の瞬間でした。
通常、私たちは何らかの問題に遭遇すると、無意識に与えられた枠の範囲内で考える癖があります。この思い込みから脱することができれば、新しい画期的解決策が見つけられますが、ファシリテーターが参加者の思い込みと同じ枠内で問いを投げて画期的な視点は得られないものです。
ファシリテーターが参加者の思い込みの外に出て、参加者に問いを放ち、参加者が思い込みから離脱する視点をつくる必要があります。そうすると、参加者がこれまで気づかなかったアイデアに至る、これが創造的対話へ至る方法だと思います。
ただし、この思い込みの離脱には強弱があるようです。私の体感では、思い込みの少し外に出るものから、全く別の軌道へ飛躍するものまであるようで、この外れ方が大きいほど斬新な着想が得られるようです。大きな発想のジャンプを起こすために、気づいた2点があります。
まず、常識やルールといった枠を外して物事を見る習慣をつけること。ここで、同書にある発想法が役立ちます。ただし、読んだだけでは今一つ体得感が得られないので、実際に使って評価してみることを私はお勧めします。また、常日頃から発想法を用いたものの見方をしてみることも有効です。
次に、参加者と適切な関係をつくることです。同書の発想法を使うのは、下地となる関係が必須です。それは単に友好的な関係ではなく、更にリラックスした状態、例えば笑いが出てくるような環境が必要です。もちろん、ふざける感覚とは異なりますが、日本のオフィスワーカーにとっては、まだあまり馴染みのない環境ではないかと思います。 何よりもファシリテーター本人が、このような点を意識し、常日頃から肩の力を抜いて考える習慣をつけなければならないと、自戒の意を込めて強く思いました。■