円滑なコミュニケーションのための意外な側面

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Karl EggerによるPixabayからの画像

はじめに

外国の方たちと話すというと、語学の能力が頻繁に言及されます。例えば、就職の条件でTOEFL〇〇〇点とかよく出てきますよね。確かに語学は基礎として必要ですが、それだけでは仕事では不十分だと私は思います。お互いが理解しあうこと、つまり、コミュニケーションは語学よりもっと広い領域があります。以下にその例を組織の外と内のふたつのシチュエーションで説明します。

組織外:コンテクストの違い

言葉や表現を定義付ける背景や状況、つまりコンテクストは国や文化、組織によって異なるものです。私の経験では、単語や語句、ロジックの組み立て方にその違いが出てくると思います。

理解しやすいのは、日本語の「よろしくお願いします」です。英語では、この言葉にばっちりとあてはまるものはありません。日本語で伝えたい意味を更に深く考えて、「ありがとう」、「これからも連絡を取りましょう」、またはその他の意味を特定する必要があります。

また、ロジック、つまり話の組み立て方も相手の文化によって変える必要があります。問題をずばりと指摘して解決策を提示するのがふさわしい場合もあれば、国によっては、それはとてもキツイ言い方になり、相手の思考が停止してしまうこともあります。仮にその場では相手の了解を得たとしても、後から期待したような反応を得られず、結果として「信用できない」といった誤った判断をしてしまうこともよくあります。問題の特定は遠回しにして、対応をお願いする方が受け入れられやすい場合もあります。

このような違いは、言語の能力を上げるだけでは対応できません。相手の方の文化の一般的傾向の理解をしたり、日常的なやり取りや新聞などから頻繁に使われる語句やロジックを分析したりする必要があります。

組織内:関係のあり方

同じ組織内の上司や部下、同僚との間では、相手に対して作られた固定観念がコミュニケーションの阻害要因となることがあります。言語を理解していても、理解のスイッチが入っていないと、期待する行動は起こらないものです。

例えば、総務部は○○だとか、管理職は○○だといった理由で、話をしても通じないといった不満を覚えることはよくあります。もちろん、外国人の同僚との間でも似たようなことは起こります。

この場合は、相手と理解しあえるような関係にあるかを常に確認し、その方向へ向けていく働きかけが必要です。相手の表情やしぐさ、言葉の使い方から分析するとともに、お互いに前向きな結果を目指すような素地づくりも必要です。また、視点を変えて物事を捉えたりして、関係に変化を与えることも有効です。

まとめ

今回は組織の外と内に分けて説明しましたが、この逆も発生することがあります。組織外で関係のあり方が問題になったり、組織内でコンテクストの違いが問題になったりすることもあります。いずれも語学のように得点を上げれば済むわけではなく、常にアンテナを張り、このような違いを意識し、コミュニケーションのメインテナンスを行う必要があります。■

参考

  • Erin Meyer (2014) The Culture Map: Breaking Through the Invisible Boundaries of Global Business
  • 安斎 勇樹(2020)問いのデザイン: 創造的対話のファシリテーション
  • Kenneth J. Gergen (2015) An Invitation to Social Construction 3rd Edition