オンライン旅行というものに参加しました。東日本大震災の被害にあわれた方が、9年後の様子を現場からのLive中継でお話を聞かせて頂くというものです。「重い」お話なのかなと少し引きながら参加したのですが、予想と反して多くの考えを引き出して頂く充実した時間を過ごさせて頂きました。
その感想 2シリーズの2回目。オンラインでのコミュニケーションの力です。
思ったよりも伝わるものだ
在宅勤務やオンライン教育などで挙げられるように、一般的にオンラインでは共感や感情を伝え、育むことが難しいといわれています。
しかし、今回の「オンライン旅行」は全く違い、共感や感情がよく伝わってきました。震災というテーマから悲哀を想像されるかもしれませんが、そうではありませんでした。それは、もっと前向きで、楽なことではないが取り組むべき価値のあるメッセージでした(その1)。
おそらく対面で同じような体験をすれば、別の感じ方をしたのかもしれません。しかし、今回についていえば、オンラインの方がよかったかもしれないと思っています。感情に流されすぎず、客観的な情報とライブ中継を合わせたことで、別の形のリアリティーを感じました。
何が違うのでしょうか?
ライブ中継のつくられすぎない率直さ
ライブ中継と講師の語りはとても強力で、臨場感、現場のリアリティーを感じました。テレビのようなメディアならもっと巧妙にやってのけるのでしょうが、逆にそうした造作が少ない方が、特定の見方にはめ込まれず、「これって新しい」と感じました。この感覚はYouTubeと似ていています。
図や写真、動画:客観的情報
ライブ中継一辺倒で見る方もやる方も持つのかな、と思っていましたが、中継の間に図や写真、動画が入ったことがよかったです。単に語りだけでなく、その間に客観的情報を与えて頂くことで、情動的になりすぎず「バランスがとれ」説得力がありました。周到な準備を要することだと思いますが、これはオンラインでの会議や教育でも使えるでしょう。
実物:必ず正しいとは限らない
講師のお話の中に実際にその現場を見られた方でも正しい情報がないと誤解をされることがあるという事例がありました。私たちは対面で会ったり、実物を見たりすれば、正しい理解ができると信じがちですが、必ずしもそうでないものです。実物や対面が唯一の正しいことであるという発想自体を変えればよいのでは、と思いました。
オンラインには別のリアリティーがある
思えば、私たちはいかにオンラインのコミュニケーションが対面でのそれに近づけることを追及してきましたが、そもそも二つは異なるもので同じにはなりえない、オンラインはオンラインでしか得られない現実がありうると感じました。別のものなのです。
これは旅とは少し違う体験でした。少なくとも観光という感じではなく、娯楽を超えた別の体験です。商業的な観光を否定するものではありませんが、時にはこのような示唆や考えを生む場もよいと思います。このような機会を望む人たちが特に日本人には増えているのではないでしょうか。■