パニックに陥らないシンプルな方法

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今、パニックや恐怖といった言葉が巷であふれています。新型コロナウィルスの影響です。先日は日本で、トイレットペーパーの買い占めが発生しましたNewsweek誌によると、同じことが世界中で発生しているそうです。パニック買いです。ことはトイレットペーパーに限りません。私の身の回りでも既にマスクは買えませんし、消毒用アルコールや手洗い石鹸が品薄です。日本のドラックストアの店員は、殺気立ったお客様に大変困っています。

多くの報道では、これはパニック、つまり人々が恐怖心に駆られて起こすことだと指摘しています。一旦こうなると人々の恐怖の連鎖は止まりません。人は恐怖のあまり、理性を失ってしまいます。

では、なぜ恐怖心に駆られると、私たちは理性を失ってしまうのでしょう。BBCのトイレットペーパー買いだめについての記事では、様々な専門家や学者の意見が載っていました。確かにこれらの意見は正しいものですが、どうすればそれを防げるかについては十分な示唆はありませんでした。こういったときの典型的なアドバイス「パニックになるな」は有効に機能しません。むしろ、さらなる恐怖とパニックを誘発しかねません。

社会心理学者のロイ・バウマイスターとジャーナリストのジョン・ティアニーの著書”The Power of Bad”では、この恐怖に対する人間の反応を少し違った視点で興味深く解説しています。

恐怖に対する反応は人間の脳の中の最も基本的な部分で発生するそうです。自分の命を左右する危機一髪の場面に出くわしたときには、反射的に逃げないといけません。こういう時は他のすべての考えを排して、決定をくだす。そうしないと生き残れないのです。この時ヒトの脳は感情に支配され、理性を排するようにできているのだそうです。だから、私たちは恐怖を感じると、理性的には考えられず感情に走り、パニックに陥りやすい、そういう風に元からできているというわけです。

さて、どうしたらよいのでしょうか?

この本では、具体的なストーリーを基に心理学的な助言を具体的に与えてくれます。しかし、私がもっとも腑に落ちたのは、この本の中に出てくるフェリックス・バウムガートナーというスカイダイバーの経験の基づく一言でした。彼は上空3.9万メートルからの音速超えるダイビング記録をつくりました。でも、そこに至るまで、彼は、迫りくる恐怖を克服しなければなりませんでした。この過程で彼がしたひとつのことは意外と簡単だが効果的なことでした。

「呼吸法が大変役にたつ」そうです。

私はこれを「深呼吸して、もう一度、目の前のことを見直す」と解釈しました。

私自身の経験でも、確かに仕事や生活で危機に出くわすと、その事態の収拾に夢中になってしまうものですが、そういう経験を重ね、今は大抵の場合は、「ちょっと待て」と一歩引いて考えるようになってきました。先ほどの「深呼吸…」は、私の「一歩引いて…」をより意識的に行うものでしょう。命の限界までより近づいた方の経験を使わせて頂きたいと思います。

今の世の中はSNS、インターネット、TVなどのおかげで、情報がとても速く届きます。普段便利なものなのですが、いったん危機が発生すると、大量の情報が一気に押し寄せることになります。

ましてや今回の新型コロナウィルスは、台風や地震といった災害と異なり、進み具合がなかなか目に見えません。それが長く続きます。見方を変えると、災害が発生した時と異なり、今、ここですぐに行動を起こす必要はないものです。少なくとも、息を吸って、もう一度、見直すくらいの時間はあります。「深呼吸して、もう一度、見直す機会を持つ」いかがでしょうか。■